I ターン日記(20)

山の中のテニスコート <中> 2002 11/2 某紙掲載 ギャラリーがいなくて・・ **村と**町、**町にまたがる○○ダムのダム湖に沿って、 車をめったに見かけないドライブにはもってこいの道が走っている。 渓谷を流れる川沿いに○○○公園はあって、村の家から…

Iターン日記 (19)

山の中のテニスコート <上> 2002 10/26 某紙掲載 使用料は「いりません」 「徒歩十分の圏内に、野球場にフットサルコート、 テニスコート、体育館まであるんだから。 これであとコンビニとCD 屋があれば完璧だね。 文句なしに一ヶ月は遊べるな」 大学生に…

Iターン日記 (18)

ヘビの数 <下> 2002 10/19 某紙掲載 必要な「共存共栄の志」 さすがに田舎暮らし七年目ともなると、ヘビを見たぐらいでは騒がない。 春が巡ってヘビの初お目見えとなると、 それが季節感の感慨になるのだから、人は五感で環境に反応する。 一昨年、ウグイ…

Iターン日記(17)

ヘビの数 <中> 2002 10/12 某紙掲載 不可抗力の侵入者たち **村に来てから二年くらいは、トイレにガが入ってきたり、 お風呂場にクモがいると大騒ぎして泣きわめいていたY子だった。 あちこちで頻繁にY子があげる悲鳴に、 なにをしていても飛んでいかな…

Iターン日記 (16)

ヘビの数 <上> 2002 10/5 某紙掲載 お父さんが一番田舎モン 山あいの村では三月の中ごろから田おこしが始まる。 車を運転していてふと気がつくと、こちらの田んぼ、あちらの田んぼと 黒い土が掘り起こされている。 長い冬枯れの風景を見慣れていた目が一番…

Iターン日記 (15)

映画に出てくるみたいな学校 <下> 2002 9/28 某紙掲載 感じる「礼節」の空気 小学校では子どもたちは先生からファーストネームで呼ばれていた。 六年生になれば、みんな児童会の役付きになるが、児童会の選挙があった時、 Y子が持ち帰った選挙活動の表を見…

Iターン日記 (14)

映画に出てくるみたいな学校 <中> 2002 9/21 某紙掲載 きしむ階段 伝わる年月 木枠のガラス戸で開け閉めする**小学校の昇降口に、 子どもたちのげた箱は片側だけで、 四十数名分から自分の子どもの靴を探すのに手間はいらない。 校長室と職員室の前の廊…

Iターン日記 (13)

岡山の旧吹屋小学校の写真をお借りした。この記事の木造校舎は今はもうない。 映画に出てくるみたいな学校 <上> 2002 9/14 某紙掲載 校庭にはイチョウの大木 ひと足先に○○村へ来ていた主人は、東京に残っている私たちに 「小学校はね、映画に出てくるみた…

Iターン日記 (12)

草取り <下> 2002 9/7 某紙掲載 見事な自己表現に感嘆 目に触れる所が全部土の上にあるのだから、 気温が上がるごとに、ひと雨降るごとに草はもちろん成長する。 家の周囲の草取りが一周終われば、次の草がもう生えているといった具合で、 素直な心で観察…

I ターン日記 (11)

草取り <中> 2002 8/31 某紙掲載 花を植え草に先手打つ 主人が草刈りに追われているようには見えないから ひとまず安心といったところだが、 私にとってはこれこそ田舎暮らしの知られざる醍醐味と言ってもいい。 「田舎へ来て何が一番大変か」と聞かれたら…

I ターン日記 (10)

草取り <上> 2002 8/24 某紙掲載 やっぱり必要 草刈り機 私たちが引っ越してきたのは夏の七月二十六日だった。 入った集落は神社があるからだと思うが、「宮組」という名前だった。 翌日、自治会長の奥さんに案内してもらって 集落の二十数軒に挨拶回りを…

I ターン日記 (9)

大好きなおじさん <下> 2002 7/20 某紙掲載 言葉に隠れた優しさ 村の中でもう一度引っ越しをしたとき、村の大型ゴミの処理場へ行った。 六年前のことだ。 役場で届けをして自分で搬入する。 それは本線道路から脇道へそれた山の中にあった。 主人と二人、…

I ターン日記 (8)

大好きなおじさん <中> 2002 8/3 掲載 ゴミ処理に追われて 引っ越してきたひと夏中、私はゴミ処理と格闘した。 おおげさでもなんでもない。 頭の中はほんとにゴミのことでいっぱいだったのだ。 おじさんが言ったゴミ処理は経験したこともなく、 想像しても…

I ターン日記 (7)

大好きなおじさん <上> 2002 7/27 某紙掲載 ゴミはヤレンモンだけ 引っ越してきて一週間後のことだった。 テレビがちゃんと映らないので、 以前電気店をしていた人が村にいると聞いて、来てもらった。 無事にテレビは映って、麦茶を飲んでいたらそのおじさ…

I ターン日記 (6)

⬜︎⬜︎トンネル <下> 2002 7/20 某紙掲載 不思議の国へ導く扉 「山並みハイウエー」が終わると⬜︎⬜︎トンネルにさしかかる。 このトンネルは峠をくりぬいてできている。 昔いくつもの峰の向こうに、 あちらの国こちらの国が眺められたということだろうか。 Y子…

I ターン日記 (5)

⬜︎⬜︎トンネル <中> 2002 7/13 某紙掲載 心動かされる四季の表情 海辺の○○市の街を背にして、五、六分も走るとすぐに家が途切れる。 畑や田んぼの間を、対向車もまばらな直線の県道が通っている。 内緒の話だが、時速八十、九十㌔で飛ばす車はざらで、 とろ…

I ターン日記 (4)

⬜︎⬜︎トンネル <上> 2002 7/6 某紙掲載 田舎暮らしに反応する舌 移り住んで半年過ぎたころには、Y子は 「山、山、山、もう見飽きちゃった」と車の中で嘆いた。 「これならビル、ビル、ビルの方がまだましだった」とも言った。 一昨年、遊びに来た台湾の友人…

I ターン日記 (2)

引越し荷物 <中> 2002 5/25 某紙掲載 欲しい物は時間かけて さて、家電が問題だった。 引っ越してきた当日、一番に電気を入れた冷蔵庫が冷えなかったのである。 手伝いに来ていた実家の父がその夜、ウイスキーも飲めないと知るや、 もう暗くなったのに、○○…

Iターン日記 (1) 

引越し荷物 <上> 2002 5/18 某紙掲載 東京の電話帳が必要だ. トラックで引っ越し荷物を送り出して、 わたしたちは「出雲号」という東京発の寝台夜行列車に乗った。 七月下旬の暑い盛りで、友人の家でシャワーを使わせてもらい、夕方の発車だった。 東京を…

I ターン日記 (3)

引越し荷物 <下> 2002 6/29 某紙掲載 クーラーが必要ない夏 エアコンだけはちゃんと動いていたが、 一年後に村の中でもう一度引っ越した時、 この村ではクーラーは必要ないということで、前の家に置いてきた。 夏の日中、かなり気温は上がるが汗という物が…